2012年10月26日

再受験体験記B -再受験についての私見-

■医学部受験は難しい
「医学部再受験に成功する人は○%である」という文句はインターネット上でよく見受けられる。果たしてこれがどの程度正確なのか私には分からないが、間違いなく言えることは、医学部入試は大学入試の中では難関であるということである。私自身、かつて2流の私大で大学生をしていた頃は国立大学の医学部生といえば本当にとてつもなく勉強の出来る人というイメージでしかなかった。そして自分が医学部に合格出来るなんて、考えたこともなかった。

医学部再受験を終えてみると、圧倒的なエリートと呼べる人は東大や京大などの旧帝医学部の学生くらいかなと思うようになったが、統計的に見れば、国公立の最底辺レベルの医学部にやっと入学出来るような人であっても、理系の学生全体で見れば上位数%の範囲に収まる成績を取っているのである。医学部が難関である事が良いことか悪いことかはともかく、現状がそうである以上、医師を目指す人はまずはその範囲の学力をつけ、医学部入試を突破しなければならない。


■医学部再受験はおすすめか
医学部再受験を終えてみて思うことは、やっぱり結構なギャンブルだったのかもしれないということだ。医学部に入るためには、高レベルな試験を突破するのは当然として面接も突破しなければいけない。面接一発アウトの再受験生がそれなりにいるという現実を見てみると、自分は運がよかったなと単純に思う。
普通の就職活動などと比べれば医学部再受験では点数の開示なども出来るし、比較的平等であるとも言えるのだが、最終的な合否の判定基準はブラックボックスの中である。再受験生はマイノリティーだ。どんな差別を受けどんな結果になっても文句を言わないという覚悟がある程度求められるのかもしれない。

また再受験に成功し医学部に入ることが出来たところで、必ず医者になれるわけではない。医学部生活は6年間と長い。その間もきちんと勉強をし、実習に参加し国家試験を通ってようやく医師免許を得ることが出来る。その後も研修医として2年間は働き、1人前の医者になるには医学部入学後10年は見ておく必要があるだろう。その間何が起こるかはわからない。
大学にもよるが、留年などのリスクもかなり高い。再受験生は留年率が高い?などという噂も存在する。また、狭い社会である医学部でうまく渡っていく対人スキルもある程度必要そうである。私自身、今も今後の不安がないわけではない。

医師という仕事も単純に待遇面で見ればどこまで魅力的な仕事かは分からない。誰もが知るように労働時間は長い。その分給料もいいが、ワークライフバランスという観点からすればあまりいい仕事とはいえないだろう。命を扱う職業であるから、言うまでもなく責任も重く、訴訟のリスクなども存在する。
また医学部の定員増などの影響で、今後10年程度で医師の需要と供給は逆転するという試算もある。これから医学部を目指しても、一人前の医師になる頃には医師余りの時代になり、医者としての能力がより一層厳しく求められる時代になるのかもしれない。
また先の見えない日本の状況を鑑みると、給与面もどこまで保たれるのかは定かではない。

あえてマイナスな面ばかりを並べてみたが、こういったマイナス面を補って余りあるプラスの面を見出すことが出来ないのであれば、再受験というのは基本的にあまりお勧めできない。私自身再受験生であったということもあり、同じ再受験生にはがんばってほしいと思う。
しかし、いい大人がポジティブな要素だけを並べて前向きになるのはちょっと違うように思う。ただでさえ難しい医学部受験において、現実をきちんと見つめ、目に見えないハンデを背負っていく覚悟を持つ必要がある。
そのようなマイナスな面も見たうえで、医学部再受験に魅力と勝算を見出せるのであれば、是非再受験に挑戦してもらいたい。高い志を持った人には是非頑張って欲しいと思う。


■合格可能性の見積もり
私は再受験中、同じような再受験生のブログをよく読んでいた。再受験ブログをやっている人は、少なくとも模試の成績でみれば、それなりの実力者が多い。しかし、そんな人たちでも合格率は概ね20%程度だと思う(あくまでもある1年で見た場合)。この割合はおそらく全国の医学部の倍率とほぼイコールだと思う(約5倍?)。
医学部再受験成功者のブログもたくさんある一方で、合格にたどり着く前に放置されたブログがたくさんある。削除されたブログもある。また、某SNSの再受験コミュなどを見ても、例年合格報告は10件前後。そういったことを考慮すると、やはり成功率はかなり低そうである。

しかしながら、そもそも再受験を志す人は、誰しもが多かれ少なかれ受かると思って勉強を始めるはずである。自分が絶対に受かるわけがないと思いながら勉強する人はいないはずだ。合格に対して、絶対的な確信はないにしても、少なくとも多少の希望を持って再受験に挑むのである。しかしそんな人たちの合格率がいいとこ20%なのだ。これは大いに着目すべきポイントではないかと私は思う。何が言いたいのかと言うと、多くの人の再受験成功への見積もりは誤っているということだ。


■再受験に失敗は許されない
高校生が受験をするのであれば、とにかくがむしゃらに医学部を目指し勉強するというのは有りだと思う。たとえ合格出来なかったとしても、医学部を目指して勉強していれば、医学部を諦め他の学部に行くことは容易である。医学部以外の道も十分に選ぶことが可能だ。
だが再受験生ではそうはいかない。再受験生で医学部は無理だったからと言って、他の学部に進む人はほとんどいないだろう(薬学部や歯学部等医療関係の学部に行く人はもしかしたらいるかもしれないが)。

一概に言える事ではないが、私のように再受験に当たって仕事をやめてしまえば、基本的に再受験に失敗は許されない。では仕事をしたまま受験に挑めばいいではないかと思う人もいるかもしれないが、そんなことが出来るのは旧帝レベルの大学を出た理系出身者くらいだと思う。学習の効率は密度を高めることで飛躍的に上がるものだ。一度限りなく国公立の医学部レベルに近づいた事のある人でなければ、働きながら医学部に入るというのは難しいだろう。

仕事を辞めたあげく、再受験に失敗すれば、残るのは大きな空白期間だけだ。それ以前のキャリアに戻ることはなかなか難しい。今の経済情勢などを考えると、再受験を諦め再就職を目指すというのはとても厳しいものだろうと思う。例え、「毎日10時間受験勉強をしていました。センター試験で9割は取れたのですが。」とか言っても誰も聞いてはくれない。計画性、先見性のない夢見がちな人という評価になってしまうかもしれない。


■医学部再受験を考えるにあたって最初にすべきこと
受験勉強は自分自身を常に出来る限り客観的に見つめ、自分の足りない能力を伸ばしていく作業の繰り返しである。それゆえ、自分を客観的に評価出来る能力というものが、再受験成功のための必須の能力ではないかと私は考えている。
そして、ある人が再受験に成功するかどうかは、大げさに言えば実は最初から決まっているのではないかとすら思っている。自分の実力をきちんと見積もれる人、自分を客観視する能力が高い人のみが成功するのだ。

だからこそ再受験をする人が最初の段階で最も考えるべきは、果たして自分は医学部に受かるだけの能力があるのか、そこに至るまでの継続した努力が出来るのか、という事を見極め、それに対するなるべく客観的な根拠を見つける事ではないかと思う。自己評価は少し厳しいくらいでちょうどいい。医学部合格を信じて止まない自分に、何でそう思うのか?その根拠は?と掘り下げて、自分なりの理由を持つことが必要だ。

posted by ヒル at 17:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 再受験体験記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。今年春から、医学部再受験を決心した社会人(20代後半)です。文系大学卒業で、国公立の医学部への入学は不可能に近いと、周囲から反対されています。しかし、再受験をする社会人にとって、10代の現役生と大きく異なる点は、おっしゃる通り「失敗が許されない」ことだと思います。その分、受験に対する気持ちの持ち方が、格段に異なると思います。「医学部に行けたらいいな」ではなく「行かなければいけない」くらいの気持ちです。

ただ、(当たり前ですが)国公立の医学部受験・入学の経験はありませんので、先行きがとても不安でもあります。本当に、「医学部再受験」に足を踏み入れる覚悟が自分にあるのかと自問自答しながら、情報収集をしています。

そんな中で、ヒルさんのような詳しく書かれているブログは、とても大きな助けになります。
本当にありがとうございます。
これからも、楽しみにしています。
Posted by nana at 2013年01月29日 22:11
>nanaさん

コメントありがとうございます。

気持ちを強く持つことはいろいろなことを可能にしてくれると思います。
ご自身の気持ちを大切にしつつ、いろいろな情報を探してみてください。
そして、出来る限り自分を客観的に分析してどうするか検討することをオススメしたいと思います。


長々と文章を書いているので、こんなのを誰か読んでくれているのかなと思うこともありますが、そう言って頂けると非常に嬉しいです。
ありがとうございます。

Posted by ヒル at 2013年01月30日 19:59
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